豊田市美術館「エッシャー 不思議のヒミツ」展

9月15日(日)、豊田市美術館の
「エッシャー 不思議のヒミツ」展を見に行きましたが、
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まぁ、ある程度は覚悟してはおりましたが‥‥
大変な混雑で、鑑賞もそこそこに出てしまいました。

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マウリッツ・コルネリス・エッシャー(1898-1972)
チラシ表面に使われている《相対性》1953年 や、
裏面の《物見の塔》1958年 などのいわゆる「だまし絵」
畑が白い鳥や黒い鳥に変わっていく《昼と夜》1938年
白と黒の図形で埋め尽くされた《平面の正則分割Ⅲ》1957年
‥‥美術に特に関心のない人でもエッシャーの絵は見たことが
あるのではないでしょうか。子どもにも大人気だと思います。



7月13日(土)に展覧会が始まった時、エッシャーだから、
できれば子どもたちが夏休みではない平日に‥‥なんて
思ってたんですが、この夏の忙しさと暑さと台風、そして
他の展覧会に行ったりしているうちに、気が付いたら
9月23日(月・休)までの会期が、もうあと一週間!!

最終週の土日祝はさすがに避けたい、と出かけたんですけど‥‥
まずは駐車場が満車。待っている車が2台くらいだったので、
出た車があって、わりとすぐに入れたんですが、
空いている場所が見当たらず、一方通行で出口まで来てしまいました。
「豊田市博物館の駐車場もご利用ください」って表示もあったので、
新しくできた豊田市博物館の方へ廻って、こっちも混んでたけど、
なんとか駐車スペースを見つけて停めることができました。

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入口にあったこの建物はトイレ。乳白色のガラスで、
オシャレだけど、中はまぶしいほど明るくて、とにかく暑かった(^^;;

今年4月26日に開館した豊田市博物館
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私は初めて見ます

敷地は豊田市美術館とつながっています。
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階段を上がると、豊田市美術館の2階の庭園に出ます。
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今、高橋節郎館が改修工事のため2025年1月16日まで休館しているので、
庭園をまわって1階の入口から入ります。
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年間パスポートを提示して、チケットをもらいます。
(エッシャー展、一般当日1,700円
年間パスポート3,000円はなんてオトクなんでしょう!!)

なんと、この展覧会、全ての作品が写真撮影可!!

なんですが、この混雑では、なかなか撮影できなかったし、
せっかく撮影したのも上手く写ってなかったりして(T.T)

1章 デビューとイタリア

まずは、エッシャーの師
サミュエル・イェスルン・ド・メスキータ(1868-1944)の版画が
2点展示されています。

そのうちの1点《サボテンのある自画像》1927年
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メスキータについては、
東京ステーションギャラリー「メスキータ」展
https://shizukozb.seesaa.net/article/2019-08-13.html
で知ったんですが、ナチスによってアウシュビッツで亡くなり、
エッシャーたちがアトリエに残された作品を決死の思いで
持ち出して守り抜いたってことを知りました。

そのメスキータ展の図録には、参考資料として、
アムステルダム市立美術館で戦後初めて開催された
「メスキータ作品展」(1946年)の図録に掲載された
エッシャーの文章が翻訳して掲載されています。

1898年にオランダで生まれたマウリッツ・コルネリス・エッシャー

1919年にオランダ・ハールレムの建築装飾美術学校に入学。
両親の希望で建築コースを履修するが、すぐに
メスキータの版画専修コースに転向して、木版画の制作を始めます。
メスキータはオランダのアール・ヌーヴォー運動を牽引する存在だったとのこと。

1921年に出版された友人アート・ファン・ストルクの著作のための連作
《イースターの花》
小さな木版画の連作で、黒と白のコントラストが素朴で力強い。

メスキータの木版画に似てるのはもちろんだけど、
京都国立近代美術館「世紀末ウィーンのグラフィック」展
https://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2019-02-23
で見た木版画とかの雰囲気にも似てるなって。

それからイタリアへ旅行・滞在。
イタリア各地の風景を描いた作品が並んでいました。
エッシャーは自然の風景というより、
建物や階段が入り組んだ街の風景や建物に興味があるように思える。

《夢(カマキリ)》1935年
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背景のイタリアの教会のような建物と大きなカマキリがインパクト!
シュールな雰囲気

エッシャーの手描きの素描が展示されてるのって珍しいなって
《パレルモ》1936年
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2章 テセレーション(敷き詰め)

ここから、いわゆるエッシャーらしいというか、
エッシャー以外にはこんな作品を作った人はいないのでは? って作品
西洋美術の流れの中で異質ですよね。

まずは平面を分割して敷き詰める「テセレーション」

この展覧会、エッシャーの作品だけでなく、
あちこちに映像や体験できる場があるんですが
(なので展覧会のタイトルが「不思議のヒミツ」)

エッシャーがスペイン・グラナダの
アルハンブラ宮殿の装飾模様を細かくスケッチしたって
映像を見て、なるほどーとは思ったんですが、
騎士のような複雑な形がきちんと敷き詰められているのを見ると、
やっぱすごいなーと。
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(スミマセン、写真ボケてますが(^^;>

エッシャーの作品の形が回転したりコピーされていき、
平面が埋め尽くされていく映像もありましたが、
現在のようにデジタル処理で簡単にコピーできる時代ではなく、
これらの複雑な形を木版で彫っているわけで、すごい手間だなって。

でも、これ豊田市美術館のコレクション展の方で
展示されているのを見て驚いたんですが、
この《方形の極限》1964年
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隣に版木が展示されてたんですが、赤とグレイの2版で、
三角の版木を90度回転させて刷っているわけですね!!
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この複雑な3色の版画《渦巻き》1957年 では、
赤版とグレイ版は同じ版木で、180度回転させてるんです!!
黒版も180度回転させて2回に分けて刷っていると!!
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(図録より)


3章 メタモルフォーゼ(変容)

テセレーションで展示されていた作品でも、
敷き詰められた形が変化してたりしてましたが、

チラシ裏面の《昼と夜》1938年 のように、
畑が黒と白の鳥に変化していったり、
魚と鳥になったりと、動きが加わってダイナミックで面白い

そして、192×3895mmという長い作品
《メタモルフォーゼⅡ》1939-1940年
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4章 空間の構造

図録の表紙にも使われている《写像球体を持つ手》1935年
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エッシャーの描写力すごいなって。
このリトグラフ、豊田市美術館も所蔵しているんですよね。
ゲルハルト・リヒター展のコレクション展
豊田市美術館コレクション展「反射と反転」
https://shizukozb.seesaa.net/article/2023-01-20.html
で展示されてて、エッシャー持ってたんだ! って驚きました。
(今回のコレクション展の版木にはもっと驚きましたけど!!)

この絵のエッシャーの代わりに自分が写ったような写真が撮れる
体験コーナーがあったんですが、並んでいる人が多すぎて諦めました。

凹面と凸面の球体(の半分が並んでいる)に映りこむ像を
見ることができるコーナーもありました。


5章 幾何学的ななパラドックス(逆説)

チラシ裏面に使われている《描く手》1948年
いわゆる「だまし絵」手を描いている手、
でもそれも写実的に描かれた絵なんですよねー

そして、チラシ表面に使われている《相対性》
絵の中の人がそれぞれの方向に動いているデジタル映像、面白い!
中央の階段から出てきた荷物を持った人はその上(絵の中では)の
ドアから落ちてしまうんです(^▽^)

ずっと階段を上っている、あるいは降りている《上昇と下降》1960年

ありえない《物見の塔》1958年

流れ落ちた滝の水が水路を流れて、また滝の上に戻ってくる《滝》1961年

どれもよく知られたエッシャーの作品ですね!


6章 依頼を受けて制作した作品

最後に、以来を受けて制作した蔵書票や、
新年のグリーティングカードが展示されていました。

新年のグリーティングカード、いいな
年賀状のアイデアに使いたい!

あまりの混雑に、図録買ってじっくり見ようと、
かなりすっ飛ばして展示室を出ちゃったんですが、

その先の展示室6では、エッシャーの絵に入り込めるような
鏡の部屋があり、もちろん行列ができていましたが、
わりと早く進んでいるようだったので、並んで入ってみました。
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エッシャーの《深み》1955年 のよう
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展示室7では、大きさが変わって見える体験ができる
―これ「エイムズの部屋」ですよね?―
部屋もありましたが、こちらはパス

この後、2櫂のコレクション展「増殖とループ」を見ましたが、
そのことは次の記事で。

豊田市美術館での私の楽しみは、
カフェレストラン「ル・ミュゼ(味遊是)」にて、
展覧会にちなんだ期間限定デザートを食べること!

写像球体を食べる人 ドリンクセットで1,600円(税込)
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透明なゼリーの球体! ガラスの皿も素敵
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フルーツをかけていただきます。
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ドリンクはアイスコーヒーを選びました。
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ショップで図録購入
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3,300円(税込)なんですが、年間パスポート見せたら、
5%引きになっちゃいました!

そして、置いてあったこちらの本、興味を引かれて購入
「イスラム芸術の幾何学」1,320円(税込)が、こちらも5%引きになりました!!
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私、1976年に池袋にあった西武美術館で開催された
エッシャー展を見に行ったことがあるんです。
これが、日本で初めてのエッシャー展だったとか。
会期 1976年4月16日~5月5日
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マンガが好きで絵を描くことが好きくらいで、
運よく多摩美に入ることができ、東京に出てきてすぐのこと。
エッシャーは名前も知りませんでしたが、
同級生たちが、この展覧会は絶対に見に行かないと って
騒いでいて、私は、ふーんってくらいで行ったんですが、
びっくり!! すごい! って。
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その頃はただ描かれている巧妙なだまし絵に驚いていたんですが、
今回の展覧会では(じっくり見られなかったのが残念だけど)初期の作品も
多く展示されていることで、これを彫ってるのってすごいなと、
エッシャーの木版の技法にも注目して見ることができました。

コレクション展で見た版木には驚いた!
版木を回転させて刷ってるとか、同じ版を色を変えて刷ってるとか、
それができるのは、きちんとした計画が必要なわけで、
コンピュータのない時代にすごいなと。
(今ならコンピュータでコピペとか簡単にできるのに‥‥)

リトグラフも石板に油性のクレヨンで描いてるんですってね

「テセレーション」という言葉も初めて知りました。
エッシャーがアルハンブラ宮殿の装飾模様を細かくスケッチしていた
って知って、今回、ショップで本を買ったこともあり、
イスラムの幾何学模様に興味がわいてきました。
(来年の年賀状のヘビの図に応用できないかなー(^^)


この「エッシャー 不思議のヒミツ」展は、
2023年12月14日(木)~2024年2月25日 佐川美術館
2024年4月27日(土)~6月30日 富山県美術館
2024年7月13日(土)~9月23日(月・休) 豊田市美術館
と巡回してきました。

ブログ記事書いてる間に展覧会が終わってしまったけど、
ネットで調べてたら、エッシャーの展覧会って
結構やってるんですね。
長崎のハウステンボス美術館で「大エッシャー展」が
2024年7月15日(月)~2025年3月2日(日)だとか、

東京 上野の森美術館で2018年6月6日(水)~7月29日(日)に
開催された「ミラクル エッシャー展」は、
大阪 あべのハルカス美術館で
2018年11月16日(金)~2019年1月14日(月・祝)
福岡アジア美術館で2019年2月28日(木)~3月30日(土)
愛媛県美術館で2019年4月12日(金)~6月16日(日)と
巡回したんですね。

子どもから大人まで、美術にそんなに興味のない人でも
楽しめるのがエッシャーの作品ですから!


豊田市美術館: https://www.museum.toyota.aichi.jp/

この記事へのコメント

  • sknys

    混雑する展覧会こそ、予約制に欲しいと思います。
    エッシャーの作品を最初に目にしたのは 「少年マガジン」 の表紙でした。
    まだ子供だったので、アートとして鑑賞するという意識はなかったなぁ。
    後年見つけた澁澤龍彦の『夢の宇宙誌』は表紙も内容も鮮烈でした。

    どこでエッシャー展を観たのかは記憶が曖昧です。
    Bunkamura ザ・ミュージアム(2006)だったかな?
    「Fire-Ball」(1979)の扉絵で《写像球体を持つ手》をオマージュしている大友克洋は西武美術館(1976)で観ているはずなんですが^^;

    レメディオス・ヴァロは新宿・伊勢丹美術館(1999)で観ました。
    僅か16日間の開催でしたが、今でも強く印象に残っています。
    「フリーダ・カーロとその時代」(Bunkamura ザ・ミュージアム 2003)にも数点出展されていました。
    2024年09月25日 22:22
  • しーちゃん

    sknys さん、エッシャーの絵を使った「少年マガジン」の表紙(1970年2月8日号)、図録に「日本におけるエッシャー受容の諸相」として載ってました。私はこれ知らなかったですが、すごいインパクトありますね! この頃の少年マガジンの表紙、横尾忠則を使った表紙もあったりと、今から思うとスゴイですよね! 「あしたのジョー」や「巨人の星」が連載されていたマガジンの黄金期だったとか。
    うーん、思い立って出かける私としては予約制は微妙なところなんですけど、やっぱり展覧会はゆったり見たいなぁ。贅沢かな?
    2024年09月26日 10:04