https://shizukozb.seesaa.net/article/2025-4-16.html
コレクション展(2025年度第1期)へ。
今回、愛知万博20周年記念事業として
フランス・オービュッソンのタピスリー:
『千と千尋の神隠し』 が特別展示されています。

大阪・関西万博も始まったけど、愛知万博から20年かー
愛知万博では「サツキとメイの家」が人気のパビリオン(?)の一つでしたね。
万博終了後も残されて、会場跡地にジブリパークができました。
愛知県美術館でも、
2021年に「ジブリの大博覧会」
https://shizukozb.seesaa.net/article/2021-08-01.html
2022年に「ジブリパークとジブリ展」
https://shizukozb.seesaa.net/article/2022-11-26.html
が開催されました。
で、今回はフランス・オービュッソン国際タピスリーセンターが制作した
『千と千尋の神隠し』の一場面を織り上げたタピスリーが展示されていると。

フランス中央部の街オービュッソンは、15世紀頃からタピスリーが織られてきた街として知られており、2009年にはこの地方で織り上げられたタピスリーやその伝統的な技術がユネスコの無形文化遺産に登録されました。(チラシ裏面の文)
私、正直ふーん、アニメの場面をタペストリーにしたのね、って
《カオナシと対面する千尋
映画『千と千尋の神隠し』(宮崎駿監督)の一場面より》

遠くから見ただけでは、大きなタピストリーだとは思ったけど、今は印刷でこれくらいに拡大することもできるわけで‥‥でも近づいて、これが織られたものであること、細かな色の違い、グラデーションの表現などを見て感嘆しました。織りに詳しくない私でも、これは手間かかってるわー!! と。



使われた糸見本。249色あるんですって?!

それぞれに番号が付けられて、グラデーションがわかるようにつながれています。

タピスリーの工程が説明されていました。


裏側から織るので。下絵は左右反転しているんですね。
デルフィーヌ・マンジェレによるタピスリーの下絵


グラデーションは点線であらわされています。使用する糸の色も指定されています。
織工たちは経糸の下に敷かれた下絵をたよりに織っていきますが、最後まで表面を見ることができないので、本番を織る前に試し織りを作成し、理想的な仕上がりになるまで試行錯誤を繰り返すとのこと。
完成まで表面を確認できないのは不安だなぁ。
ルネ・デューシュによる試し織り

裏側はこんなふうになっています

このタピスリーの展示は、「どうぶつ百景」の4月11日(金)~6月8日(日)と、
「竹内栖鳳展」の7月4日(金)~8月17日(日)の期間。
大阪・関西万博のフランスパビリオンでは『もののけ姫』のタピスリーが展示されているそう。
次の展示室5は、「アートとテキスタイル」
ルーチョ・フォンターナのキャンバスを切り裂いた作品《空間概念》1960年
キャンバスが布であるってことを再認識させた作品
空間に白い布を吊り下げた
庄司達《白い布による空間'68-2》1968年(1979年再制作)

などが展示されていましたが、私この作品気に入りました
ナタリア・ゴンチャローワ『サルタン王と、その息子、ほまれ高い、たくましい勇士グヴィドン・サルターノヴィチ公と、まことに美しい白鳥の王女の話』1921年

ちょっとレトロで素朴な雰囲気が私のツボです。

ナタリア・ゴンチャローワは、「ロシア出身の画家、デザイナー。モスクワの前衛芸術の中心で活動した後、1916年にパリに移住。ロシアのイコンや民族衣装、民芸品などのもつ素朴な造形や鮮やかな色彩構成などをもとにして、舞台美術や衣装、ファッション、テキスタイルのデザインを行いました。この作品はロシアの文学者アレクサンドル・プーシキン(1799-1837)の詩に、ゴンチャローワが挿絵をつけたもので、登場人物の畏怖気にはゴンチャローワ特有の色彩感覚や装飾性、プリミティブな表現が見られます。」(キャプションの説明)
エマニュエル・ヨーゼフ・マルゴールド《シュタイナー社製ウィーン工房のテキスタイル見本帳》1910年頃

カール・オットー・チェシュカ《『ニーベルンゲン』(「ゲルラハ青少年叢書 第22巻」)》1908年頃
世紀末ウィーンのグラフィック!

アニ・アルバース《垂直線を含む(『コネクションズ 1925/1983』より)》1946年(オリジナル)

「バウハウスの中で唯一女性を受け入れていた織物工房で学び、第二次世界大戦時にアメリカに移住、主にテキスタイル・デザインや版画制作を行いました。本作はアニが過去に手掛けたテキスタイルやインテリア・プロダクトのデザイン画を、1983年にシルクスクリーンで制作した版画作品です。バウハウスの合理的、機能的なデザインから次第に有機的なデザインへの変化が認められ、アメリカ移住後に旅行した南米の伝統的なテキスタイルの技術やデザインの影響が指摘されます。」
垂直線のバックは細い斜線になっています。

4枚展示されていたうちの3枚目
アニ・アルバース《ナイロン・ラグのための習作(『コネクションズ 1925/1983』より)》1959年(オリジナル)

アンリ・マティス《シャルル・ドルレアン詩集》1950年 より
マティスのウサギかわいい!!

水野里奈《Peacock Garden》2021年

うわー、めまいがするほどの装飾過多! 派手な模様の布を貼り合わせたよう(油彩で、絵具が盛り上がっているところもいい) 異質なものも混ざって混沌としています。



藤井篠《泰山木》1959年

藤井達吉の作品? って見たら、達吉さんのお姉さんだそう。刺繍でできています。
竹村京《There and Now, kimi shini tamou koto nakare 2》2006年

テロの現場写真を引き伸ばしたものの上に薄い布がかぶせられ、テロで失われてしまったヤシの木が刺繍で表されています。
エドワード・ジョン・ポインター《世界の若かりし頃》1891年

愛知県美術館のコレクションの中でも私が好きなロマンティックな絵。
「どうぶつ百景」を見てきたせいか、今回、池の金魚に目が行きました。
吉本直子《白の棺》2005年
着古した白いシャツを固めて作られています。

2013年のあいちトリエンナーレでの展示がすごく良かった片山真理さん
あいちトリエンナーレ2013 (5) 納屋橋エリア
https://shizukozb.seesaa.net/article/2013-09-15.html
片山真理《veil #002》2013年

先天性脛骨欠損症のため義足の片山さん。子どもの頃から「見られる」という感覚があったんでしょうね。花嫁衣裳のような白いヴェールは、外界の自然にさらされることから心身を守るもの。
片山真理《ballet #002》2013年

たくさんの目のモチーフがついた(あ、この作品何回か見てるけど、目のモチーフだって初めて気が付いた!)バレエの衣装は、見られることを意識していると。
額も含めてお耽美な雰囲気が私の好みです。
展示室6~8は、企画展「どうぶつ百景」にちなんで、愛知県美術館の所蔵品からいきものの作品が紹介されています。
展示室6 愛知県美のいきものたち 洋画篇
戸張孤雁《雪の日やあれも人の子樽拾い》制作年不詳

「樽拾い」とは、得意先から空瓶を集めて歩く酒屋の小僧さんのこと。雪の中、暖かそうな猫がうらやましいでしょうね。犬も猫になりたいと思っているかも。
熊谷守一の猫たちは当然展示されています。(木村定三コレクション)
手前の猫の彫刻(テラコッタ)は、
木内克の(左)《猫(すわる)》制作年不詳 (右)《猫(横たわる)》1962年
(どちらも木村定三コレクション)

シンプルな形なのに、猫の柔らかさがすごく感じられる!

須田剋太《蟻》1988年(木村定三コレクション)
迫力!!

熊谷守一の《かたつむり図皿》ももちろんよかったけど、
こちらも、思わず笑っちゃうほどいい!!
山下清《染付蝸牛図大皿》(木村定三コレクション)

展示室7 愛知県美のいきものたち 日本画篇
土田麦僊《春昼》1926~30年頃(木村定三コレクション)

(左)加藤藤春宇《長石釉兎形手焙》江戸時代(18世紀末~19世紀前半)(木村定三コレクション)
(右)《銅兎形香炉》江戸時代(17世紀~18世紀)(木村定三コレクション)

ふわふわのウサギがいっぱい!
太田一彩《兎》1930年頃

花鳥風月を描く日本画らしい白鷺の絵
中村岳陵《芦に白鷺鶺鴒図》1921年頃

西村五雲(左)《朝露》 (中)《新月》 (右)《栗鼠》 3点とも1937年頃(木村定三コレクション)

西村五雲は竹内栖鳳に師事。動物画を得意として、動物画では師を凌ぐとまで言われたそう。
展示室8 愛知県美のいきものたち 木村定三コレクション 古代~近代
《刻文短頸壺(陶質土器)》新羅・三国時代(6世紀)
壺に刻まれた馬の文様がかわいい!

(左)《狂言面・狐》江戸時代(19世紀) (右)《狂言面・鳶》江戸時代(17世紀)

竹に雀を描いた、素朴でほほえましいような絵、え?! 徳川五代将軍綱吉が描いたの?!!
徳川綱吉《竹雀図》江戸時代前期-中期(17世紀後半~18世紀初期)

こちらは徳川四代将軍家綱が描いた絵
徳川家綱《白頭翁図》江戸時代前期-中期(17世紀後半~18世紀初期)

こっちも素朴‥‥「黄檗宗の開祖隠元(いんげん)の法を継いだ禅僧独吼(どっく)が賛を書いています。」
仙厓義梵《趙州狗子図》江戸時代後期(18世紀後半~19世紀前半)
犬も笑っている小僧さんもかわいい!!

江戸時代初期から近江(現在の滋賀県)大津の追分ろ三井寺で売り出された民衆絵画「大津絵」
猫とネズミが酒盛りをしています。ヘタウマ?な雰囲気が楽しそう!!

村瀬太乙《馬上狐図》1873年
「美濃に生まれた太乙は23歳から京都で頼山陽に儒学を学び、山陽の没後は名古屋で儒学を講じ、のち犬山藩に招かれました。詩書画にも優れ、禅的で大らかな絵を多く遺しています。《馬上狐図》は71歳の1873(明治6)念に圓福山妙厳寺(豊川稲荷)のために描いたもの。「戯墨」と書かれているように、馬のお尻あたりを画面に収めるため寸詰まりにしているところにも味わいがあります。」

私、これすごく気に入っちゃった!!かわいい!欲しい!!
《白磁金魚置物》江戸時代(18世紀)

前室には、
佐藤香菜《透明な境界線1》2016年

2013年の「円山応挙展」の時のプロジェクト・アーチvol.5 「佐藤香菜―森の中へ」で見た作家さん
https://shizukozb.seesaa.net/article/2013-03-14.html
何度か見てる絵なんだけど、今回、キャプションの説明で
「佐藤香奈は現実の幻想の間にいる動物を描き続けています。この作品では、7頭の鹿がいる空間を荒々しい筆触の赤色が飛び交い、奥の鹿の顔などが塗りつぶされています。この赤は鎌倉時代の絵巻物《春日権現験記(かすがごんげんげんき)》で山の木々を枯らしままた再生させた神様の火で、画面最奥の黒い水は別の世界につながっているそうです。手前しの3頭の鹿には、奥の3頭が先に死に近づいていることが見えているのかもしれません。そして江戸時代の琳派(りんぱ)絵画を参考にした無地の背景には、小さな命を定着させるかのように草花が刺繍されています。」
そうか‥‥このペタッとしたいかにも絵の具って赤にはそんな意味が‥‥!
出窓のところには、2匹の油絵の具でできた猿の立体
木村充伯《祖先は眠る(2匹の猿)》2015年
やすらかに眠っているようにも、油絵の具のシミが死体から出る体液のようにも見える

そして、キャプションで上を見て気がついた
木村充伯《あ、犬がいる!》2004年
奈良美智の犬を描いた作品も展示されていました。(寄託作品)
(左)《レンブラント犬》1995年 (右)《犬 Ich glaube nicht deiner Idee!》1993年頃

奈良美智《YOU ARE NOT ALONE.》1995年

ロビーに出ると、
(手前)後藤白童《七面鳥》1961年 (奥)三沢厚彦《Animal 2008-01》2008年

奥の壁にかかっているのは
平田あすか《大地の音図》2020年

柳原義達《風の中の鴉》1982年

愛知県美術館はコレクション展も充実しているので、鑑賞に時間かかるけどとても満足です。
この日、私のいつもよりは早く家を出たので、もう1つ美術館行けるかな? と思ったけど、
やはり今から美術館へ行くにはちょっと時間が足りない。
新緑が美しい屋上庭園のアルナルド・ポモドーロ《飛躍の瞬間》1984年

お腹空いてたので(コレクション展見る前に、同じフロアにあるウルフギャング・パックでランチしようと思ったら、この日、貸し切りとかで入れなかった)セントラルパークのKFCでバーガーセット食べて、地下鉄で名古屋駅へ行くと、名鉄百貨店で「アートコレクション展」を開催しているポスターが目に留まり、まだ時間あるなってちょっと覗いてきました。東山魁夷や横山大観の絵、バルビゾン派の絵画、川瀬巴水や吉田博の版画‥‥絵もいいけど、ついている値段も(^^; もちろん買えるはずもないのは、出品されている画廊の方もわかってらっしゃいますよね。

名鉄電車の中吊り広告
愛知県美術館: https://www-art.aac.pref.aichi.jp/
